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2015年9月25日 (金)

「雨の日に」 (ルプレザンタシオン9月号掲載)


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わたしの恋人は変な人だ。
デートだと言うのにいつも行き先をちっとも教えてくれない。
雨の日に傘もささない。
かばんは持ってない。
穴のあきそうなジーンズの右のお尻のポケットに二つ折れの財布を入れている。

雨の日に傘をささない恋人のお尻のポケットからビスケット


付き合ってから一度もプレゼントをもらったことがない。
もう3年経つけれど。
そう言えば先週のデートは朝から気持ちよく晴れていて、
わたしは迎えに来てくれた車に乗る時、
お気に入りの9センチの高さのあるヒールのサンダルを履いていた。
その日は鍾乳洞に連れて行かれた。
案の定、わたしは鍾乳洞の下りの階段ですべって転んだ。
彼は、すりむいて血が出たわたしの向う脛を、
痛そうな顔をして眺めてはごめん、って言う。

雨の日に傘をささない恋人がわたしに買ってくれた長靴


雨の日に傘をささないなんて、
デートの行き先がわからないなんて、
3年も付き合っていてプレゼントが長靴だけなんて、
あんまりだ。もう別れよう。
わたしだって人並みの幸せがほしかったんだ。
普通の人と恋をしたかったんだ。
変な人はこりごりだ。
次は雨の日にちゃんと傘をさす人を好きになろう。

雨の日に傘をささない恋人がわたしの腕まくらで眠るの


雨の日の夜だった。
やっぱり彼は傘をささないでわたしの部屋に来た。
玄関で服と靴下を脱ぐように教えたのは、絨毯がぼとぼとになるから。
この人のいいところは、教えたことはちゃんと守ってくれる。
そういう聞き分けのいい大型犬みたいなとこ、好きだったけど。
愛してたんだと思うと泣けてくる。
そういえば、って、彼はいつものように脱衣所からパンツ一丁になって、
わたしの前にやってきて、小さくて四角い箱を見せる。
ん、と渡してくれる。
リボンがかかっている。
もちろん包装紙は濡れている。
信じられない。
信じられない。
中には、
青い、
青い、
青い、
小さな石のついた指輪。

雨の日に傘をささない恋人がわたしに買ってくれたサファイア



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