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2016年3月

2016年3月25日 (金)

「温かな舟」

サラダを盛ってパンにバターを塗るだけの遅い夕食 猫と暮らせば

晴れた日がさみしいのなら会いに来て いつでも雨の桟橋にいる

温かな胸に額を押しつけてあなたがわたしの舟であること

夜の海をひらく光よわたしたちもう照らされなくてもかまわない

Imgp3084
photo by satoshi tsuji






* * *





冬の長い町は、
春が短い。

春が終わる前に、
夏が始まる前に、
海に行きたい。




* * *

2016年3月 4日 (金)

「花の鎖」

牛乳に苺浮かせて熱のある日には作ってもらうごちそう

もぐりこんだ布団の下から声がする本日三割引特売日

おばあちゃんの指はつめたい天井にねずみばあさんのシミがある

まっくら森のおくから聞こえてくる声よわたしは海の水が飲みたい

冒険のつづきは起きたらできなくて今日も行きたくない保育園

友だちがいないおかげで先生が友だち大きいねひとみちゃん

たっちゃんは小さい怖い生き物でえらそうに言うおれとあそべよ

卒業の日を待って咲く桃の花わたしの胸に咲く紙の花

ひさかたの光のどけき春の日にわたしじゃお姫様になれない

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糸車、ミシン、アイロン、裁ち鋏、ほこりだらけの日向でねむる

祖母の部屋に祖母の匂いはしなくなり月下美人の枯れた鉢植え

たっちゃんは大きくなって優しくなって航空学校へ行きました

もう燃えることなく町に横たわる窯はお洒落なカフェと呼ばれて

あの夏の花火みたいな友情がつづく商工会青年部

休日が年に十回しかなくて 総理、選挙は来週にして

阪神を家族で応援してるなんて人ってどんな風にも変わる

軒先の暗さに慣れてきたころに人感センサー付きの照明

流星をかぞえてわたしどんな願いも叶う資格があるね。あるよね

一人でいれば独りでいいと思うけど毎日猫を抱えてねむる

薄青い夜明けに夢をみるように誰かを愛したがる心は

風の歌をおしえてくれる人といて花の鎖はほどけてしまう

あなたから名を呼ばれれば健やかに育つわたしのさみどりの楡

父のように兄のように師のように触れ得ぬ人はみなあたたかい

Imgp0105
photo by satoshi tsuji





* * *




期待しないことを覚えて、
生きるのがすこし楽になった。



今日、41歳になりました。

毎日ごはんがおいしくて、
わたしは幸せです。




* * *





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